
結論からお伝えします。無資格でも、訪問介護事業所以外の多くの介護施設で介護職として働けます。施設などでは、身体介護や生活援助も資格がなくても担当できます。一方で、無資格の方にできないことは主に3つです。
- 医療行為(資格の有無にかかわらず、介護職は原則として行えません)
- 訪問介護員として働くこと(所定の研修修了などが必要です)
- 「介護福祉士」と名乗ること(名称独占資格です)
介護業界には、資格を持たずに働き始める方も少なくありません。この記事では、介護現場で無資格の方ができること・できないことを、転職を考える方の目線で整理します。制度は見直されることがあるため、最新の内容は厚生労働省や勤務予定の事業所、自治体でご確認ください。
無資格だとできないこと
無資格の介護職に禁じられている行為は決まっています。まずは「できないこと」から押さえておくと、働き方のイメージがつかみやすくなります。
資格の有無にかかわらず、介護職ができないこと
介護職が原則として行えない代表的なものが「医療行為」です。医療行為とは、医師の医学的判断や技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為のことで、法令上は「医行為」と呼ばれます。医師法などにより、医師や看護師など免許を持つ人が行うものと定められています。
たとえば、メスを入れる、レントゲンを撮影する、摘便をする、褥瘡(じょくそう)の消毒や処置をする、インスリン注射をする、といった行為は医療行為にあたります。こうした行為は、介護福祉士などの資格があっても、原則として介護職が行うことはできません。
資格がないと行えないこと
医療行為のほかに、資格がなければ行えないこととして、次の2つがあります。
1つ目は、訪問介護員として働くことです。デイサービスやデイケア、特別養護老人ホーム(特養)で働くのに、特別な資格は必要ありません。一方、訪問介護員(ホームヘルパー)として働くには、介護福祉士、実務者研修、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などの修了が求められます。
訪問介護事業所の「サービス提供責任者」になれるのは、介護福祉士や実務者研修の修了者などです。以前は、初任者研修の修了者が実務経験を条件にサービス提供責任者になれる仕組みがありましたが、2018年4月の制度改正で見直されています。具体的な要件は変更されることがあるため、応募先の事業所や自治体の案内で確認してください。
2つ目は、「介護福祉士」と名乗ることです。「介護士」「介護職員」「看護助手」といった呼び方は、資格がなくても使えます。しかし「介護福祉士」は、国家資格を持つ人だけが名乗れる名称です。社会福祉士及び介護福祉士法には、介護福祉士でない者が介護福祉士という名称を使ってはならないという趣旨の定め(名称の使用制限)があります。つまり、介護福祉士は「名称独占資格」です。
ここまでの内容を、表にまとめます。
| 資格の有無にかかわらず、介護職ができないこと | 特定の資格があればできること(無資格の介護職にはできないこと) |
|---|---|
| 医療行為(原則) | 訪問介護員として働くこと 介護福祉士と名乗ること 生活相談員として働くこと(条件は都道府県によって異なります) |
生活相談員になるための条件は、都道府県によって異なります。社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護福祉士などの資格を条件にしている県もあれば、介護職としての経験をふまえて認めている県もあります。働く地域の条件は、自治体の案内で確認しましょう。
また、職場によっては、無資格の介護職に一人での屋外の付き添いを任せなかったり、研修期間を長めにとったりする場合があります。資格がある方と比べると、任される範囲に差が出ることがある点は知っておくと安心です。
無資格でできる介護の仕事
「医療行為」「訪問介護」「介護福祉士と名乗ること」以外であれば、無資格でも介護の仕事に就けます。ただし、介護職が行ってよい行為には判断の分かれやすいものがあります。以前は医療行為と考えられていたものの、現在は医療行為ではないと整理されたものもあります。
医療行為にあたる行為と、あたらない行為
2005年(平成17年)の厚生労働省の通知(医政発第0726005号)では、介護現場で判断に迷いやすい行為のうち、原則として医療行為ではないと考えられるものが示されています。体温の測定、自動血圧測定器による血圧測定、パルスオキシメーターの装着などが、その例として知られています。
通知には、爪切り、口腔ケア、ストマ装具のパウチにたまった排泄物の廃棄、浣腸、軟膏の塗布や湿布、点眼、内服の介助なども挙げられています。ただし、これらには「利用者さんの状態が安定していること」「一定の範囲に限ること」などの条件が付いています。たとえば、条件に合わない場合や、状態に異常がある場合は、介護職が行える範囲には含まれません。
条件の詳細は通知の本文で確認でき、法令の見直しにより整理が追加されることもあります。実際の現場では、利用者さんごとの状態や事業所の方針によって判断が変わるため、自己判断せず、勤務先の看護師や医師の指示に従ってください。
研修を受ければできる「痰の吸引」と「経管栄養」
痰の吸引と経管栄養は、研修を受けた介護職員等が、一定の条件のもとで実施できる行為です。喀痰吸引等研修を修了し、都道府県から「認定特定行為業務従事者」として認定されることなどが必要です。勤務先の事業所が登録を受けていることも求められます。
行える範囲は決まっています。痰の吸引は口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部までで、それより奥は含まれません。経管栄養は、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養からの注入です。研修の内容や要件は変わることがあるため、受講を考える場合は、お住まいの都道府県の案内で最新の情報を確認してください。
ここで示した行為は、無資格の介護職にとって判断が難しい場面があります。迷ったときは自己判断せず、担当の医師や看護師に確認することが大切です。
身体介護と生活援助
介護は、大きく「身体介護」と「生活援助」に分けられます。身体介護は、利用者さんの体に直接触れて行う介助で、起き上がりの介助や移乗の介助などです。生活援助は、利用者さんの生活を手伝うサービスで、掃除、洗濯、食事の準備などです。
デイサービスや特養などの施設では、身体介護でも生活援助でも、実施すること自体に資格は必要ありません。「資格がないと身体介護はできない」ということはありません。ただし、訪問介護では身体介護も生活援助も訪問介護員の資格が必要です。
無資格でも働ける介護施設
訪問介護事業所を除けば、無資格でも介護職として働ける職場は多くあります。例を挙げます。ただし、募集の条件は事業所ごとに異なるため、求人票でご確認ください。
| 無資格で働ける職場の例 | 無資格だと働けない職場 |
|---|---|
| 病院、クリニック デイサービス、デイケア 特別養護老人ホーム 有料老人ホーム 介護老人保健施設 サービス付き高齢者向け住宅 グループホーム 小規模多機能型施設 ショートステイ | 訪問介護事業所 |
無資格で入職する場合の認知症介護基礎研修
2021年度(令和3年度)の介護報酬改定で、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を持たない方には、認知症介護基礎研修を受けさせるための措置を事業者が講じることが義務づけられました。3年間の経過措置を経て、2024年(令和6年)4月から完全に実施されています。
新しく採用された無資格の職員については、採用後1年間の猶予が設けられています。対象となる職員や免除となる資格は国の基準で決まっています。受講費用の補助の有無や受講の流れは、自治体や事業所によって異なります。入職前に、受講の流れを面接や求人票で確認しておくと安心です。
無資格者に関係する法律
無資格でも多くの仕事に携われますが、次の3つの法律には特に注意が必要です。
| 医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法など | 医療行為などについて |
|---|---|
| 介護保険法 | 訪問介護員の条件について |
| 社会福祉士及び介護福祉士法 | 介護福祉士の名称について(名称独占) |
よくある質問
Q. 無資格・未経験でも介護職として働けますか?
A. 訪問介護事業所以外の多くの職場で、無資格・未経験の方を募集している場合があります。入職後に研修を用意している事業所もあります。募集条件は事業所ごとに異なるため、求人票で確認してください。求人の探し方は無資格・未経験でも募集している介護職求人の探し方で紹介しています。
Q. 無資格でも夜勤に入れますか?
A. 資格の有無だけで夜勤に入れるかどうかが決まるとは限りません。夜勤に入れる時期や条件は事業所によって異なります。詳しくは無資格の介護職が夜勤あり求人を探す方法をご覧ください。
Q. 資格を取ると、できることはどう変わりますか?
A. 初任者研修を修了すると訪問介護員として働けるようになり、介護福祉士を取得すると「介護福祉士」と名乗れます。働ける職場や任される業務の幅が広がり、手当や給与に反映される事業所もあります。金額や条件は事業所ごとに異なるので、求人票で確認しましょう。
まとめ
無資格でも、介護職としてできることはたくさんあります。そのうえで、医療行為、訪問介護、介護福祉士という名称の使用については、決まりがあります。特に「資格の有無にかかわらず介護職が行えないこと」と「資格があればできること」を分けて理解しておくと、転職先選びや入職後の戸惑いを減らせます。