介護福祉士が養成校教員・講師として働く方法:教員の給料、要件
介護福祉士の中には、デイサービスや特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)といった介護現場ではなく、教員や講師として働いている人も存在します。例えば、介護福祉士養成校の教員として勤めている人などです。
その他にも、介護職員初任者研修や実務者研修の講師として活躍している介護福祉士もいます。
ただ、こうした介護福祉士の教員や講師の仕事に関しては、働きたいと思っている人の多くが「教員として働くためには何が必要なのか?」「教員や講師の給料はどれ位なのか?」「そもそも求人はあるのか?」といった、さまざまな疑問を抱えています。
そこで今回は、「介護福祉士で養成校教員・講師として働く方法」について解説します。
ここでは、介護福祉士の教員や講師として働くための要件・資格、給料事情、求人事情について述べていきます。
介護福祉士が教員・講師として働く要件・資格
介護福祉士が教員や講師として教育現場で働く方法には、主に「介護福祉士養成校教員」「実務者研修・介護職員初任者研修の教員・講師」「福祉系高校の教員」という3つがあります。以下に、それぞれの教員・講師として働くための要件について記します。
介護福祉士養成校教員
介護福祉士養成校には、学生数に応じた数の「専任教員」を配置しなければいけません。専任教員とは「学校に常勤しており、授業だけでなく事務や学生の就職・生活面の指導をする教員」のことを指します。つまり、介護福祉士養成校の教員を主な仕事として働いている人のことです。
・介護福祉士養成校教員の必要数
学生総定員 | 専任教員数 |
---|---|
80人以内 | 3人 |
81~200人 | 3+(学生総定員-80)/40 |
201人以上 | 6+学生総定員-200/50 |
そして、介護福祉士が養成校の専任教員になるためには、「社会福祉士介護福祉士養成施設規定」によって定められた条件を満たす必要があります。具体的には、以下に記す3つのいずれかをクリアしていれば、専任教員として働くことができます。
・介護福祉士、医師、保健師、助産師、看護師又は社会福祉士の資格を取得した後5年以上の実務経験を有する者
・大学院、大学、短期大学又は高等専門学校において、教授、准教授、助教授又は講師として、その担当する教育に関し教授する資格を有する者
・専修学校の専門課程の教員として、その担当する教育に関し3年以上の経験を有する者
また、介護福祉士養成校のカリキュラムである、領域「介護」「こころとからだのしくみ」の専任教員として働くためには、満たさなければいけない要件が異なります。具体的な条件を以下に記します。
領域 |
専任教員となる要件 |
---|---|
「介護」 | ・介護福祉士の資格を取得した後、5年以上の実務経験を有する者 ・厚生労働大臣が定める基準を満たす講習会(介護教員講習会)の修了者、その他、そのものに準ずる者として厚生労働大臣が別に定める者 |
「こころとからだのしくみ」 | ・医師、保健師、助産師又は看護師の資格を有したあと5年以上の実務経験を有する者 ・厚生労働大臣が定める基準を満たす講習会(介護教員講習会)の修了者、その他、そのものに準ずる者として厚生労働大臣が別に定める者 |
介護福祉士の中には、専任教員ではなく非常勤として働く人もいます。例えば、「普段は介護保険施設で働いているけど、週に1日だけ養成校教員として勤めている」といった人です。
こうした立場の人たちは「一般教員」といわれます。そして一般教員として働く場合には、専任教員のように満たすべき要件はありません。
ただ、「介護福祉士養成施設の設置及び運営に係る指針」において、「教育する内容について、相当の学識経験を有する者又は実践的な能力を有する者として介護福祉士養成施設が認めたものであること」とは記されています。
いってしまえば、一般教員として勤める要件は「介護福祉士養成施設側が認めればよい」ということです。
このように、実務経験5年以上あれば、介護福祉士養成校の専任教員として働くことができます。ただ、領域「介護」を教えるためには「介護教員講習会」を修了しておかなければいけません。
そして、介護福祉士養成校求人は、ほとんどが介護職員講習会修了者が対象となっています。そのため、養成校の教員として勤めたい人は、実務経験5年以上かつ介護教員講習会を受けておくことをお勧めします。
実務者研修の教員
実務者研修とは、介護福祉士の国家試験を受けるために必須の研修です。介護福祉士は、実務者研修の教員・講師としても働くことができます。
そして、実務者研修における要件は、専任教員(教務に関する主任者)か一般教員かによって異なります。
例えば、一般教員であれば「教育する内容について、相当の学識経験を有する者または実践的な能力を有する者」と定められています。つまり、介護福祉士養成校教員と同じように、実務者研修の一般教員として働くために満たさなければいけない要件は、実質ないに等しいです。
それに対して、実務者研修の専任教員として働くためには、以下に記す要件を満たさなければいけません。
・実務者研修専任教員として働く要件
1.2のいずれかの条件 | 1.介護福祉士としての実務経験が5年以上 2.介護に関する科目を教授する資格を有する者 ・大学等の教授、准教授、助教授または講師 ・養成施設、福祉系高校での教員暦3年以上 ・福祉系高校(特例蒿、実務者研修での教員暦5年以上 |
---|---|
必須 | 実務者研修教員講習会修了 |
さらに、実務者研修の中でも「介護過程3」と「医療的ケア(喀痰吸引、経管栄養等)」を教えるためには、以下の条件が加わります。
介護過程3 | ・専任教員の資格要件を満たしている ・実務者研修教員講習会、実習指導者講習会等を修了 |
---|---|
医療的ケア | 実務5年以上の看護師等(る医師、保健師、助産師又は看護師)で、医療的ケア教員講習会修了 |
このように、実務者研修の専任教員として働くためには、介護福祉士としての実務経験だけでなく、「実務者研修教員講習会」を修了する必要があるのです。
介護職員初任者研修の講師
介護福祉士の中には、介護職員初任者研修の講師として働いている人もいます。
基本的に介護職員初任者研修の講師は、養成校教員と同じように、介護福祉士としての実務経験が5年以上あれば働くことができます。また、介護職員初任者研修には以下のような科目があります
・介護職員初任者研修における科目
職務の理解、介護における尊厳の保持・自立支援、介護の基本、介護・福祉サービスの理解と医療連携、介護におけるコミュニケーション技術、老化の理解、障がいの理解、こころとからだのしくみと生活支援技術、振り返り、修了評価 |
この中でも、「障がいの理解」に関しては、介護福祉士であっても、障がい福祉サービスで3年以上の実務経験を積んでいないと、講師として教えることはできません。さらに「介護における尊厳の保持・自立支援」の科目における、人権啓発に関する基礎知識で講師をするためには、以下の要件を満たさなければいけません。
・学識経験者、弁護士
・人権啓発を行う団体職員
・人権啓発を行う行政主管課職員
・大阪府人権擁護士
このように、介護福祉士として5年以上の実務経験さえあれば、介護職員初任者研修の講師として働くことができます。
福祉系高校の教員
福祉系高校の教員には「介護福祉基礎、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程、介護総合演習または介護実習を指導する教員」として、介護福祉士を配置しなければいけません。
介護福祉士の中には、こうした福祉系の高校教員として働く人も存在します。
そして介護福祉士の資格所有者でも、福祉系高校の教員として働くことができるのは、以下に記す2つの要件のいずれかを満たしている人のみです。
・資格の取得後5年以上の実務経験を有する者
・介護福祉士の資格を有する者であって文部科学大臣及び厚生労働大臣が別に定める基準を満たす研修を修了した者
文部科学大臣及び厚生労働大臣が別に定める基準を満たす研修とは、「教育介護実習」と「教員介護知識技能講習」の2つを指します。教育介護実習は、6時間以上の講習が5日以上、教育介護知識技能講習は全体で9時間以上のカリキュラムとなっています。
概要を説明すると、教育介護実習は「介護施設で介護教育実習を行い、介護の現場を経験するもの」であり、教員介護知識技能講習は「介護に関する最新の知識と技術を学ぶための講習」です。
またこれらの研修は、高等学校の「福祉」の教員免許を有しており、なおかつ現在教員として働いている人しか受けることができません。
つまり、介護福祉士が福祉系の高校教員として働くためには、「実務経験を5年以上積んでいる」もしくは「高校福祉の教員免許を有している上で、教育介護実習と教員介護知識技術講習を修了している」ということが条件となるのです。
このように、介護福祉士が福祉系高校の教員として働くためには「実務経験5年以上」または「高等学校教員免許(福祉)をもっており、なおかつ教育介護実習と教員介護知識技術講習を修了している」というどちらかのの要件を満たさなければいけないのです。
介護福祉士が教員・講師として働くための要件についてまとめます。
要件 |
|
養成校教員 | ・実務経験5年以上 (領域「介護」を教える場合には「介護職員講習会」修了) |
実務者研修教員 | ・実務経験5年以上 ・実務者研修教員講習会修了 |
初任者研修講師 | ・実務経験5年以上 (「障がいの理解」「介護における尊厳の保持・自立支援」の科目における人権啓発に関しては、その他の要件を満たす必要あり) |
福祉系高校教員 | ・実務経験5年以上 もしくは ・高等学校教員免許(福祉)の所有かつ、教育介護実習と教員介護知識技術講習修了 |
介護福祉士が教員となるための講習会
介護福祉士が教員として働くためには、講習会を修了しておかなければいけない場合があります。
具体的には、介護福祉士養成校教員として働くためには「介護教員講習会」を修了しておかなければいけませんし(領域「介護」を教えない場合には必要ない)、実務者研修の教員になるためには「実務者研修教員講習会」を受けておく必要があります。
そこで以下に、それぞれの講習会の概要について記します。
介護教員講習会
介護福祉士の養成校教員として働くためには、基本的には介護教員講習会を修了している方が好ましいです。介護教員講習会とは「公益社団法人 日本介護福祉士養成施設協会」や各県の介護福祉会などが開催する、厚生労働大臣指定の講習会になります。
介護教員講習会の受講資格は、介護福祉士の資格取得後に5年以上の実務経験を有している人です。
そして、具体的なカリキュラムは以下のように分野別に分けられています。
基礎分野 (合計60時間以上) |
・社会福祉学(30時間) ・心理学(30時間) |
---|---|
専門基礎分野 (合計90時間以上) |
・教育学(30時間) ・教育方法(15時間) ・教育心理(30時間) ・教育評価(15時間) |
専門分野 (合計150時間以上) |
・介護福祉学(30時間) ・介護教育方法(30時間) ・学生指導、カウンセリング(15時間) ・実習指導方法(15時間) ・介護過程の展開方法(15時間) ・コミュニケーション技術(15時間) ・研究方法(30時間) |
このように、介護教員講習会を修了するためには、全部で300時間以上の講習を受ける必要があるのです。また、介護教員講習会にかかる費用は、全13科目を受講する場合には、240,000円となっています。
介護福祉士として養成校の教員で働きたい場合には、こうした介護教員講習会を修了しておくことをお勧めします。
実務者研修教員講習会
介護福祉士が実務者研修の講師として働くためには、実務者研修教員講習会を修了しておく必要があります。実務者研修教員講習会も介護教員講習会と同様で、厚生労働省指定の講習会です。
実務者研修教員講習会の受講資格は、介護福祉士の資格取得後に5年以上の実務経験を有している人です。
そして、実務者研修教員講習会の具体的なカリキュラムは以下の3つに分類されています。
介護教育方法 | 30時間 |
---|---|
介護過程の展開方法 | 15時間 |
実務者研修の目的、評価方法 | 5時間 |
これら合計50時間の講習が、7~8日間にかけて行われます。料金は、70,000~100,000円と、開催している会社によって異なります。
介護福祉士として実務者研修の講師で働きたい場合には、こうした実務者研修教員講習会を修了しておくようにしましょう。
介護福祉士養成校教員の給料・年収
介護福祉士が教員や講師として働く場合、一般的な病院や施設に勤める人とは給料が異なります。もちろん、勤める養成校によって待遇は違いますが、養成校教員の給料は、デイサービスや特養といった介護・福祉施設の介護福祉士よりは高い傾向にあるようです。
具体的には、介護・福祉施設で働く介護福祉士の給料がだいたい250~400万円であるのに対して、介護福祉士養成校教員は400万円前後(360万円~430万円)です。
また、実務者研修教員や介護職員初任者研修の講師は、常勤であれば月収20万円前後、非常勤の場合は時給2000円前後(1,400~4,000円と幅があります)での求人が多いです。
つまり、養成校の教員は少し給料が高い傾向にありますが、実務者研修や介護職員初任者研修の教員や講師で常勤として働く場合には、福祉施設で働く介護福祉士と同程度の年収になります。
このように、介護福祉士が教員・講師として働く場合には、養成校教員であれば若干高め、実務者研修や介護職員初任者研修の講師は介護・福祉施設と同程度の年収となります。
ちなみに、福祉系の高校で教員として勤める場合には、高校教員と同じ待遇になるため、さらに給料は高くなります。
介護福祉士養成校教員の求人事情
ここまで述べたように、介護福祉士の養成校教員になると、介護・福祉施設などで働くよりも給料は高い傾向にあります。ただ、介護福祉士養成校教員の求人は、非常に見つかりにくいのが現状です。
求人サイトや転職サイトを使って検索してみても、よほどタイミングが合わなければ求人が出ていません。実際に複数のサイトで探してみましたが、介護福祉士養成校教員の求人を見つけることができませんでした。
ただ、求人サイトや転職サイトに問い合わせてみると、全く求人が出ていないわけではないようです。しかし、養成校教員の求人は数が極端に少ないため、タイミングが良くなれければ見つかりません。
また既に述べたように、養成校教員の求人には「介護教員講習会の修了」を条件としているところが多いとのことです。
そして、こうした中で介護福祉士養成校教員へ転職するためには、転職サイトに登録することがお勧めです。
転職サイトのアドバイザーに養成校教員を希望していることを伝えておけば、求人が出たときに知らせてもらうことができます。そうすることで、養成校教員の求人を見逃す可能性がなくなり、より求人が見つかりやすくなります。
今回述べたように、介護福祉士が教員や講師として働くためには、「介護福祉士養成校教員」「実務者研修教員・介護職員初任者研修講師」「福祉系高校の教員」の3つがあります。
そしてその中でも、介護福祉士養成校教員は現場で働く介護福祉士よりも給料が高い傾向にあります。ただ、養成校教員の求人は、非常に見つかりにくいのが現状です。もし養成校教員への転職を希望している場合には、早めに転職サイトへ登録するようにしましょう。
また、養成校教員への転職を希望しているにも関わらず、介護教員講習会を受けていない人は、早めに修了しておくことをお勧めします。
介護関連職者が転職を行うときは、転職をサポートしてくれる転職サイトを有効に活用することであなたに適した求人と出会うことができるようになります。
自分ひとりで求人の探索を行っても、数ある求人情報から自分に合った求人を見つけることは難しいです。また、どれだけ頑張っても2~3社へのアプローチが限界です。さらに、給料面や休日などの労働条件を交渉することは現実的ではありません。
転職サイトに登録して専門のコンサルタントに依頼すれば、100社ほどの求人からあなたに最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設、企業との条件交渉まで全て行ってくれます。
ただ、当然ながら転職サイトによって対応やサービス内容は異なります。例えば、電話だけの面接で済ませる会社があれば、必ず直接会って面接するところもあります。また、地方の求人に強い会社があれば、都心部の求人を多く抱えている会社もあります。
転職サイトを活用する際には、こうしたそれぞれの転職サイトの特徴を理解しておくことが大切です。以下のページで介護職者におススメの転職サイトにおける特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを学んだ上で利用することで、転職での失敗を防ぐことができます。
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転職サイトを活用することは、転職で成功するために有効な手段です。ただ、転職サイトは使い方を間違えると、転職で失敗することにつながります。そのため、転職サイトの有効な活用方法を理解しておくことが大切です。
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転職サイトを活用する際には、それぞれの転職サイトにおける特徴を理解した上で、あなた自身に適した転職サイトを利用することが大切です。介護職者に特化した転職サイトを比較・検討した上で、登録する転職サイトを決めましょう。
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