精神科デイケア、高齢者デイサービスでの精神保健福祉士の役割

精神保健福祉士デイケア

精神保健福祉士の中には、デイケアやデイサービスといった介護保険施設で働いている人もいます。ただ、一言でデイケア・デイサービスといっても、精神疾患患者を対象とする精神科デイケアだけでなく、要介護状態にある高齢者が通うデイサービスもあります。
精神保健福祉士には、精神科のデイケアで働く人もいれば、高齢者のデイサービスに勤めている人もいるのです。
一見すると同じようなデイケアとデイサービスといっても、精神科のデイケアと高齢者のデイサービスでは精神保健福祉士に求められる役割が異なります。
そのため、転職先としてデイケアやデイサービスを検討する場合には、それぞれの職場における精神保健福祉士の役割を理解しておくことが大切です。
そこで今回は、「精神科デイケア、高齢者デイサービスでの精神保健福祉士の役割」について解説します。

精神科デイケアにおける精神保健福祉士の役割

精神科デイケアとは、精神科・心療内科に併設されているデイケアです。つまり、精神科病院やメンタルクリニックなどが運営している外来型のサービスになります。

精神科デイケアの対象者

精神科デイケアは、精神疾患を患っており、主治医か指示をもらっている人であれば、誰でも通うことができます。もし主治医の病院やクリニックにデイケアが併設されていなくても、紹介状を書いてもらうことで、他の病院に併設されているデイケアを利用することは可能です。
そして、精神科のデイケアは高齢者のデイケアとは違い、介護保険ではなく医療保険が適応されます
具体的には、小規模(30人以内)なデイケアであれば1日640点、大規模(50人以上)なデイケアでは1日750点となっています(平成28年)。ただ、1年以上通い続けると、それぞれ50点減算されてしまいます。また、長期の利用となった場合には、診療点数が下がるだけでなく利用回数も制限されるのです。
基本的に医療費は3割負担であるため、利用者の自己負担額は小規模で1日1940円、大規模で1日2250円となります。さらに、自立支援医療も適応されるため、自立支援医療適応者は、1割負担で小規模が640円、大規模が750円で利用できるのです。
このように、精神科デイケアの対象者は、精神疾患を患っている人になります。

精神科デイケアに通う患者さんの特徴

精神科デイケアは、基本的に精神疾患を患った人が通います。当然ながら、デイケアによって患者さんの特徴は異なります。ただ、デイケアを利用している人のほとんどは「統合失調症」の患者さんがメインとなっているのが実際です。
具体的には「統合失調症の人が7割、うつ病などの気分障害の人が1割、残りがアルコール依存症やその他の精神疾患患者」というところが多い傾向にあります。
また、高齢者が通う介護保険のデイケアとは違い、精神科デイケアでは若い人たちの利用が多いです。例えば、平成21年の報告によると、20~40歳の人が35パーセント、40~65歳の人が53パーセントとなっています。
そのため、精神科デイケアの対象者は、主に若い年齢層で統合失調症を患っている人になると考えて良いでしょう。

精神科デイケアにおける精神保健福祉士の役割

大規模の場合、精神科デイケアには精神保健福祉士もしくは臨床心理士を専従で1人配属しなければいけません。その他の基準は以下のように定められています。


小規模 大規模
・精神科担当医師1名配置(兼務でも可)
・作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士のいずれかを1名専従として配置
・看護師1名を専従として配置
・精神担当医師を1名配置(兼務でも可)
・作業療法士、もしくはデイケア経験がある看護師のいずれか1名を専従として配置
・精神保健福祉士、もしくは臨床心理士のいずれか1名を専従として配置
・看護師を1名専従として配置


このように、精神科デイケアでは精神保健福祉士は欠かせない職種だといえます。
そして、精神科デイケアにおける精神保健福祉士の役割は多岐に渡ります。例えば、医師や看護師、作業療法士などとチームを組んで、対象者の社会的機能回復を目的としたリハビリテーションプログラムを実施します。
また当然ながら、精神保健福祉士には精神科ソーシャルワーカーとしての役割も求められるのです。
例えば、デイケア利用者さんの就労支援や社会資源の利用に関するアドバイスをすることは、精神保健福祉士の役割になります。
精神科デイケアにおける精神保健福祉士の役割としては、具体的には以下のようなものが挙げられます。
・デイケアでのリハビリテーションプログラムの立案、実施
・経済的支援(障害年金の請求に関する支援や生活保護受給に関する相談など)
・就労支援(就労支援施設やハローワークへの同行支援など)
・訪問支援や各関係機関との連絡調整
・社会資源利用に関する援助
このように、精神科デイケアで働く精神保健福祉士には、現場でのリハビリテーションプログラムの実施から、利用者の社会参加の支援といったように、幅広い役割が求められるのです。

高齢者デイサービスにおける精神保健福祉士の役割

精神保健福祉士の中には、精神科デイケアではなく、要介護状態にあり介護保険の適応となっている人が利用するデイサービスで働く人もいます。ただ、高齢者のデイサービスで勤める場合には、精神科デイケアとは求められる役割が全く異なるのです。
具体的には、高齢者のデイサービスでは、精神保健福祉士というよりも「生活相談員」として働くことになります。

生活相談員とは

生活相談員とは、その名の通り「介護サービスを利用している人、もしくは使いたいと考えている人とその家族に対する相談に対応する」という役割を持つ職種です。
例えば、介護保険の認定を受けている人で「デイサービスを利用したい」という人がいるとします。そうした際に、担当のケアマネを介して連絡を受け、対象者に対してデイサービスにおけるサービス内容を説明するのは生活相談員です。
また、実際にデイサービス利用中の状況をケアマネに報告するのも、生活相談員の仕事になります。
そして、生活相談員として働くためには要件があります。精神保健福祉士の資格を所有している場合は、それだけで要件を満たしているため、生活相談員として勤めることができるのです。

最初は苦労する人が多い

そうはいっても、デイサービスにおける生活相談員は精神保健福祉士の資格を持っていなくても勤めることができます。つまり、精神保健福祉士を生活相談員として必ず雇う必要はないのです。
そのため、生活相談員として働く場合には、たとえ精神保健福祉士の資格を所有していても、優遇されることはほとんどありません。
また当然ながら、デイサービスの生活相談員は介護保険に精通している必要があります。しかし、基本的に精神保健福祉士は介護保険について詳しく学んでいないのが現状です。
そうしたことから、精神保健福祉士でデイサービスの生活相談員として働く人には、最初は苦労する人が多い傾向にあります。ほとんどの人が「見よう見まねで行って慣れていく」というのが実際です。
そのため、精神保健福祉士で生活相談員として働いている人の中には「最初は苦労している人が多い」という現状があります。

ケアマネを取得する人が多い

そして正直なところ、デイサービスの生活相談員として働いていると、大きく昇給することは望めません。具体的には、精神保健福祉士がデイサービスで生活相談員として長年働いても、月の手取額が20万円前後までしか上がらないのが現状です。
もちろん、役職に就いて管理業務を行うようになれば、それ以上の給料をもらえる可能性はあります。ただ、それでも生活相談員として働く場合には、限界があるのが実際です。
こうしたことから、デイサービスで生活相談員として働く精神保健福祉士の中には、ケアマネージャー(介護支援専門員;ケアマネ)の資格取得を目指している人が少なくありません。ケアマネの資格を取ることができれば、キャリアアップの可能性が広がるのです。
例えば、ケアマネの中には、介護保険部の部長という立場にあり、実質的に施設のナンバー2という立ち位置にいる人もいます。そうなると、当然ながら給料は高くなります。
また、精神保健福祉士とケアマネのダブルライセンスがあれば、働き方はさらに拡大されます。そうなると、キャリアアップはもちろんのこと、転職なども有利になるのです。
高齢者のデイサービスで働く精神保健福祉士には、現場で経験を積んでケアマネを取得することで、キャリアアップや働き方の拡大を実現している人もいます。

求人状況

精神科デイケアで働く精神保健福祉士の数は少ないです。精神科病院やクリニックなどの数は限られている上に、一事業所で必要とされる精神保健福祉士の数も多くないためです。
例えば、ある求人サイトでは「精神保健福祉士 精神科デイケア」と検索しても、全国で300件も求人が出ていません。これは、求人サイトの中でも非常に精神科デイケアの求人数が多いサイトの結果です。他の求人サイトでは、精神保健福祉士の精神科デイケア求人が全国で60件前後しか出ていないところもあります。
それほど、精神保健福祉士が精神科デイケアへ転職することは難しいのです
その一方で、デイサービスの生活相談員であれば求人はたくさん出ています。具体的には、精神科デイケアの求人が300件前後だった求人サイトでも、生活相談員の求人数は60000件を超えています。

デイサービスでキャリアアップがお勧め

確かに、既に述べたように生活相談員として苦労している人は多いですし、給料も安いです。また、そのまま生活相談員として勤めていても、キャリアアップは望めません。
ただ、デイサービスで生活相談員として実務経験を積んで、ケアマネなどの新たな資格を取得することができれば、キャリアアップだけでなく働き方を広げることができるのです。
精神保健福祉士に限ったことではありませんが、今後も安定した雇用を維持したいのであれば、さまざまなスキルを身につけておくことは大切になります。特に精神保健福祉士であれば、ケアマネとのダブルライセンスはお勧めです。
そして、精神保健福祉だけでなく介護保険にも精通していれば、精神保健福祉士としてもケアマネとしても、利用者さんに対してより質の高いサービスをできるようになります。
今回述べたように、精神科デイケアとデイサービスでは、精神保健福祉士に求められる役割は大きく違います。デイケアやデイサービスへの転職を考えている人は、まずはこうした点を理解しておくことが大切です。
また、精神科デイケアの求人は非常に少ないです。そのため、転職を考えている場合には、デイサービスで新たな資格を取得してキャリアアップする方法も一つの選択肢として考えてはいかがでしょうか。


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