介護士の給料は今後引き上げられるのか?介護士の給料が安い理由

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介護士の中には「なぜ介護士の仕事は重労働で責任も重く、人手不足なのに給料が安いのか?」と考えている人も少なくありません。確かに介護の仕事は、業務内容がハードである割には給料が安いのが現状です。
実際に、未経験や無資格の介護士であれば、月の手取り額が12~15万円程度であるのが相場でしょう。もちろん、実家に暮らしており結婚もしていないような状況であれば、これくらいの給料でも問題ないかもしれません。ただ、特に男性で家族をもっている場合には、介護士一人の給料で家族を養うことは難しいです。
それでは、なぜ介護士の給料は安いのでしょうか? また、介護士の給料は今後上がっていく可能性はあるのでしょうか?
今回は、介護士の給料事情について「なぜ介護士の給料は安いのか?」「今後介護士の給料は上がっていく可能性があるのか?」「介護士が給料を上げるために、何を行うべきか?」ということについて解説します。

介護士の給料が安い理由

介護士の給料が安い理由は、介護士に給与を支払う介護事業所の主な売上が介護報酬によって決まっているためです。それでは、「なぜ事業所の収益源が主に介護報酬であると介護士の給料が安いのか?」ということについて説明します。

介護報酬は公定価格

介護事業所の主な収益源である介護報酬は「公定価格」となっています。公定価格とは、国の経済を統制するために政府(国)によって決められた価格です。そのため、介護報酬によって収益を得ている介護事業所の売上は、国が「○○の介護サービスに対する介護報酬は△△円」と決めたら、それ以上は請求できません。
例えば、介護保険サービスは、「要介護1の人に対して訪問看護のサービスを提供する場合には○○円」「要介護3の人に入浴介助サービスを提供するのであれば□□円」といったように、サービスの価格が決められています。
その一方で、飲食店などにおけるメニューの値段は、それぞれの店によって異なります。そのため、オーナーが商品の価格を自由に決めることができるのです。
つまり、「介護報酬を活用しているビジネス(介護事業)の場合、お客様である施設利用者の単価(一人当たりに請求できる額)に限りがある」ということです。また、基本的に1事業所がサービスを提供できる利用者の数も決まっています。
こうしたことから、収益源を主に介護報酬に頼っている介護事業所は、どれだけ頑張っても売上の上限が決まっているのです。
そのため、当然ながら介護事業所が人件費として割り当てることができる額にも限度があります。

介護報酬は低く設定されている

ここまで述べたように、介護事業所の利益は公定価格である介護報酬によって決まるため、1事業所の売上には上限があります。さらに、介護報酬は医療報酬と比較するとかなり低く設定されているのが現状です。
これは、介護保険制度が作られた背景に理由があります。
介護保険制度は、高齢者の数が増えて医療費がどんどん高くなってきたため「医療報酬とは別に介護報酬を設けて高齢者にかかる医療費を減らそう」と考えられて制定されたものです。
つまり、介護報酬は医療費による財源圧迫を回避するために作られたのです。
そのため、介護報酬はそもそも価格が低く設定されています。もし介護報酬を高くするのであれば、医療費に代わって介護費が財源を圧迫することになるため、介護報酬を設けた意味がなくなってしまうのです。
このように、介護事業所の収益源である介護報酬は低いのが現状です。このことも、介護士の給料が安い理由の一つになります。

介護報酬は年々下がっている

さらに、もともと低く設定されていた介護報酬は、年々下がっている状況にあります。
例えば、基本的に介護報酬は3年毎に見直されますが、2003年の改定ではマイナス2.3パーセント、2006年はさらにマイナス2.4パーセントという引き下げが実施されました。
2009年と2012年には、主に介護職員の処遇改善を理由にプラス改定となりましたが、2015年はマイナス2.27パーセントの引き下げとなりました。さらに、この数値に関しては、処遇改善と介護サービスの充実分プラスを除くと、マイナス4.48%となるのが実際です。
そして、2016年で3392万人である65歳以上の高齢者の数は、2025年には3,657万人となり、2042年にピーク(3,878万人)を迎えると予測されています
つまり、今後は介護保険サービスを利用する人の数が、さらに増加する可能性が高いのです。
そうなると、当然ながら国が負担しなければいけない介護費は増えていきます。その結果、国は介護費による財源圧迫を避けるために、介護報酬を引き下げていくことになるはずです
このように介護報酬には「公定価格であるため上限が決まっている」「そもそも介護報酬は安く設定されている」「介護報酬が下がっている」という事情があるため、介護士の給料は安くなっているのです。

介護士の給料は今後引き上げられるのか?

ここまで述べたように、介護士の給料は介護報酬の特性が影響して安くなっています。それでは、介護士の給料が今後引き上げられる可能性はあるのでしょうか?
以下に、今後における介護士の給料引き上げの可能性について記します。

国の財政と介護報酬について

日本の借金が年々増えていることは、一般的に知られている事実です。介護報酬は、被保険者が支払う保険料と、国や都道府県、市町村によって半々で負担されています。
2017年度の一般会計予算・社会保障関係予算の内訳では、歳出総額(国債費も含む)の約30パーセントが年金や医療費、介護費、生活保護費、社会福祉費等の「社会保障費」と報告されています
そして、歳出総額から国債費と地方交付税交付金等を除くと、約55パーセントが社会保障費で占められているのです。つまり、一般会計においては「国の借金や都道府県などの地方公共団体に必要なお金以外の半分以上が社会保障費として使われている」ということです。
社会保障費の内訳は、以下の通りです。
年金:35.2パーセント
医療:29.7パーセント
介護:8.3パーセント
生活保護費:9.2パーセント
社会福祉費等:17.5パーセント
さらに、既に述べたように今後高齢者の数はどんどん増えていく現状があります。そうなると、当然ながら必要になる社会保障費は増えます。
そのため、このままでは日本の歳出における社会保障費の割合は、どんどん高くなってしまうのです。
そして、社会保障費の負担を減らす場合に、最も対象となりやすいのが介護費です。そもそも介護費は、高齢者の医療にかかるお金を少なくするために作られたものであるため、介護費が膨れ上がってしまって財政を圧迫しているのでは本末転倒となってしまいます。
こうした国の財政状況から考えると、今後介護報酬が引き上げられる可能性は低いといえます。

介護士の需要について

ここまで述べたように、今後介護報酬が引き上げられる可能性は低いです。ただ、そうはいっても高齢化が進む現状は変わらないため、介護士の需要はどんどん高くなることが予測されます。
そのため、どれだけ介護報酬が下がっても、介護士の需要自体は上がっていくでしょう。
もちろん、需要が高いといっても、介護報酬が引き下げられるにつれて、介護士の給料も下がっていく可能性が高いです。

今後における公的な補助の可能性

介護士の需要が高くなっても、介護報酬が引き下げられれば、必然的に介護士の給料は安くなります。そうした中で、介護士の給料に対して公的な補助のような対策も実施されています。
その代表的なものが「処遇改善加算」です。処遇改善加算とは、介護職者の給与を上げるために作られた制度になります。これは、平成21年度に創設された「介護職員処遇改善交付金」が元になっており、介護職員処遇改善交付金を継続して平成24年度から新たに介護報酬に加えられたのが処遇改善加算です。
さらに、平成27年度の介護報酬改定においては、雇用管理の改善や労働環境の改善の取り組みを実施する事業所を対象に、さらに月額平均1.2万円相当を上乗せ評価する加算区分が創設されました。
このように、介護士の雇用促進(職場定着率の向上、離職率の改善)を目的に、加算が実施される場合もあるのです。
確かに、処遇改善加算のような対策が行われれば、介護士の待遇は改善される可能性はあります。しかし、こうした公的補助のような加算は、結局は国が負担するものであるため(処遇改善加算は90パーセントが公金、10パーセントが利用者負担)、いずれ限界がきます。
つまり、一時的な対処に過ぎないのです。また既に述べたように、今後歳出総額における介護費の割合が増やされる可能性はほとんどありません。
こうしたことからも、介護士の給料に対して今以上の公的補助が行われる可能性は低いといえます。

介護士の給料が上がるためには?

それでは、どのような取り組みが行われれば介護士の給料が上がる可能性があるのでしょうか。
ここでは、介護士ではなく、国や事業者側の視点から介護士の給料を上げるための方法について考えます。

経営者の役員報酬を下げる、介護事業所の利益を抑える

介護事業所の利益は、売上からテナント料や空調費などの施設運営費、職員の給与、経営者や役員などの役員報酬などを引いた後に残ったお金になります。そのため、これらの経費を削減するほど、事業所の利益は上がるのです。
もちろん、事業所に利益が残らないような状況では、いわゆる「赤字」となってしまうため、介護事業を行っていくことはできません。そうした事態を避けるためにも、経営者はできるだけ利益を上げるように工夫することが大切です。
特に、介護保険は公定価格であるため、売上の上限が決まっています。そうした中で利益を上げるためには、経費を減らすしか方法はありません。
ただ、介護事業所を経営している人の中には、自分たちの役員報酬を必要以上に高く設定している人も少なくありません。そうなると、当然ながらその分だけ介護士の給料を少なくしなければ事業所の利益は上がらないため、必然的に介護士の給与は下がることになるのです。
また、介護事業所の中には、必要以上に利益を溜め込んでいるところも存在します。特に、特別養護老人ホーム(特養)は利益率の高が指摘されて、介護報酬の引き下げにつながりました。
既に述べたように、事業を行っていく上で、利益を確保することは必須です。ただ、必要以上に溜め込む必要はありません。
そのため、こうした経営者の役員報酬や事業所が得ている利益を適正に戻すことは、介護士の給料を上げる一つの手段だといえます。

介護報酬以外の事業に取り組む

介護報酬は公的価格であるため、介護報酬のみに売上を頼っている介護事業所は利益の上限が決まっています。ただ言ってしまえば、介護報酬に頼らない事業を行えば、事業所が得られる利益を高めることができるのです。
例えば、食事を提供している介護事業所であれば、利用者以外である一般の人に対して弁当を販売することで、介護報酬とは関係のない利益を生み出すことができます。
また、他の介護事業所に対して介護技術などに関する講習会を実施することも、事業所の利益を増やすことにつながります。
このように、介護報酬に関係ない事業を実施することで事業所の利益を高めることができれば、介護士に支払う給料も高くなる可能性があります。

税金(消費税)・介護保険料の引き上げ

当然ながら、介護報酬が引き上げられれば、その分だけ介護士の給料が上がる可能性は高くなります。しかし、既に述べたように日本の税制状況を考えると、現状で介護報酬が引き上げられる可能性は低いです。
ただ、消費税などの税金などを上げる、もしくは被保険者が支払う介護保険料を高くすれば、介護報酬を引き上げることもできます
介護報酬の財源は、半分は国や都道府県、市町村、残り半分は被保険者の保険料によって構成されています。そして、国や都道府県、市町村の主な財源は税金です。そのため、納められる税金や支払われる介護保険料が高くなれば、その分だけ介護報酬に反映させることができます。
このように、増税や介護保険料の増額が実施されて介護報酬が引き上げられれば、介護士の給料が高くなる可能性があります。

給料を上げるためにあなたが行うべきこと

ここまで述べたような取り組みを国や事業所が実施すれば、介護士の給料が上がるかもしれません。しかし、こうした国や他者の動きに期待することは避けるべきです。もし介護士としての給料を上げたいのであれば、周囲の環境が変化することに期待するのではなく、あなた自身が行動しなければいけません。
そこでここからは、介護士としての給料を上げるために、あなた自身が行うべきことについて述べます。

新規事業の提案・実行

既に述べたように、介護事業所であっても、介護報酬に頼らない事業を実施することで、事業所の利益を高めることは可能です。そして、そうした新規事業を提案して実施して成功させることができれば、あなたの給料が上がる可能性は高いです。
事業内容は、何でも問題ありません。先ほど挙げたような「弁当販売」や「他施設への講習」などは、実施しやすい事業だといえます。その他にも、「有料介護相談」や「時間外の運動指導サービス」など、介護保険外で行える事業はたくさんあります。
こうした新規事業を提案、実施することは、あなたの介護士としての給料を上げるための有効な手段だといえます。

介護資格の取得

ほとんどの介護事業所では、所有している資格に対して「資格手当」が支給されます。そのため、新たな介護資格を取得することで、介護士として給料を上げることができます。
例えば、「介護福祉士」や「介護支援専門員(ケアマネージャー:ケアマネ)」「社会福祉士」などは、手当が支給される代表的な介護資格です。具体的には、介護福祉士で月に数千円~1、2万円、ケアマネや介護福祉士であれば数万円の資格手当てが付く職場がほとんどです。
こうしたことから、新たな介護資格を取得することは、介護士が給料を上げる有効な手段だといえます。
ただ、当然ながら介護職といっても職種ごとに業務内容は異なります。そのため、しっかりとそれぞれの役割や仕事内容、待遇などを理解した上で、取得する資格を選ぶことが大切です。
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転職

ここまで述べたように、ほとんどの介護事業所において介護士の給料は安いのが現状です。ただ、介護事業所の中でも待遇が良い職場も存在します。そして、そうした職場に転職することができれば、必然的に給料は高くなります。
例えば、「管理職者募集」や「新規立ち上げに伴うオープニングスタッフ募集」といった求人は、比較的好条件であることが多いです。また、こうした求人でなくても条件が良い介護士の求人は存在します。
このように、好条件の求人を見つけて転職することも、介護士が給料を上げる有効な手段の一つになります。
今回述べたように、介護士の給料が安いのには理由があります。そして、介護報酬に頼っている限り、今後介護士の給料が引き上げられる可能性は低いでしょう。
ただそうした中でも、あなた自身が行動することができれば、介護士としての給料を上げることは可能です。そのため、介護士としての将来に不安を持っている場合には、悲観的に考えるのではなく、とにかく行動することが大切です。
そうすることで、あなたの介護士としての給料を上げることができるようになります。


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